前回に引き続き税務調査に関する記事です。

税務調査で調査官から否認指摘(処理を認めない指摘)を受けた場合の立証責任についてです。

否認をした調査官側が否認をするための根拠・理由を立証するのか、又は納税者側が否認に反論するための根拠・理由を立証しなければならないのか。

立証責任は原則として調査官(課税庁)側にある

学説や判例によると調査官側に立証責任があるとするのが原則になります。

税務調査の現場で「私の指摘に対して反論が出来なけばこの処理は認めません」とう調査官がいますが、調査官側に立証責任があることを考えると明らかにおかしい発言です。

例えば、奥さんを会社の役員にしている場合でタイムカード等がなく奥さんの勤務実態を納税者側が証明出来ない場合に「勤務実態を証明できる資料がないので奥さんへの役員報酬は認められません」と調査官に言われたとします。

調査官側に立証責任があることを考えると、タイムカードがないという事実だけでは奥さんへの役員報酬を否認することは出来ません。
タイムカード以外の角度から奥さんの勤務実態を調査し、奥さんが勤務していないことを調査官が証明した場合に役員報酬を否認出来るのです。

よって、上記のように調査官が立証責任をはたさず、納税者側に押し付けてきた場合は、立証責任は調査官にあると反論することが大切です。

例外として納税者に立証責任がある場合

上記のとおり、立証責任は調査官(課税庁)側にあるます。

しかし例外として納税者側に立証責任があるケースがあります。

それは納税者に有利になる項目です。

納税者に有利になる項目は例えば下記のような項目が挙げられます。

・当初の申告で参入していなかった経費を後の税務調査で認めてもらう場合の立証責任
・租税特別措置法の特別控除を適用する場合の立証責任
・圧縮記帳による損金計上をする場合の立証責任
・通達等で認められている有利な税務処理(短期前払費用等)を適用する場合の立証責任
・加算税の賦課に「正当な理由」があり、加算税が課税されないことを主張する場合の立証責任

上記のように納税者が有利になる項目の場合の立証責任は納税者にあることに留意しましょう。

 

まとめ

納税者に不利な項目

調査官(課税庁)側に立証責任があります。
※調査官から否認指摘を受けた場合は納税者が不利なため調査官(課税庁)側に立証責任があります。

納税者に有利な項目

例外的に納税者側に立証責任があります。

 

【参考条文等】
税務訴訟における証明責任論の再構成
税務訴訟における立証責任-裁判例の検討を通して-
平成23年3月25日裁決

 

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