今回は有価証券を譲渡した時の税務上の譲渡原価の算出方法についてまとめます。

<譲渡原価算出方法>
税法上、売却時の譲渡原価の算出方法は2つあります。

①移動平均法
計算方法:(直前簿価+新規取得価額)÷(直前株数+新規取得株数)
②総平均法
計算方法:(期首簿価+期中取得価額)÷(期首株数+期中取得株数)

これだけだとわかりづらいので具体的な事例を交えてみてみましょう。

<事例>
・前提
期首帳簿価額 2,000株@200円
1月20日取得 3,000株@160円
7月10日売却  5,000株@240円
9月10日取得  2,500株@200円
→7月10日売却時の譲渡原価を算出

・移動平均法で算出した譲渡原価
譲渡単価:(2,000株×@200円+3,000株×@160円)÷(2,000株+3,000株)=@176
譲渡原価:@176円×5,000株=880,000円

・総平均法で算出した譲渡原価
譲渡単価:(2,000株×@200円+3,000株×@160円+2,500株×@200円)÷(2,000株+3,000株+2,500株)=@184
譲渡原価:@184円×5,000株=920,000円

<一般的なメリット・デメリット>
・移動平均法
売却の都度その時点での譲渡単価を計算する必要があるため、売却や購入銘柄が多い場合は管理が煩雑になります。
一方で売却の都度、売却損益が確定させることが可能なので利益管理上はメリットがあります。

・総平均法
期末に一括して譲渡原価の算定を行うため管理が簡単です。
一方で期末にならないと譲渡原価が確定しないため売却損益の金額が期末まで確定しません。

<税務署への手続>
総平均法で譲渡原価の計算を行う場合は税務署に「有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出」が必要となります。
何も届け出を出さない場合は自動的に「移動平均法」を選択したものとみなされます。
※届出期限は有価証券を取得した事業年度の確定申告期限までです(仮決算の中間申告をする場合はその期限まで)。
※一度決定した後は原則として3年程度は継続して適用する必要があります。

自社の状況を勘案して「移動平均法」「総平均法」のどちらかを選択しましょう。

 

【参考条文等】

・法人税法施行令第119条の2
・法人税法施行令第119条の5
・法人税法施行令第119条の7

 

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