お客様から現在従業員を雇用して給与を支払っているけれど、給与に代えて外注費として支払うことはできるのかというご相談を頂きました。

そもそも給与として支払う場合と外注費として支払う場合では課税関係にどのような違いがあるのでしょうか。

またどちらに該当するかの判断はどのように行うのでしょうか。

 

給与と外注費の税務処理

①給与として支払う場合

<会社側>
・給与として支払うことになります
・支払った給与から原則源泉徴収が必要になります。
・支払った給与は消費税の控除対象外です(※)。

<受取側>
・受け取った報酬は給与所得となります。
・年末調整を行えば確定申告不要です(他に所得がない前提)

 

②外注費として支払う場合

<会社側>
・外注費として支払うことになります。
・支払った外注費の内容や相手先によって源泉徴収の有無を判断します。
・支払った外注費は消費税の控除対象です。

<受取側>
・受け取った報酬は事業所得又は雑所得になります。
→所得の計算方法は「報酬-経費」です。
・確定申告が必要になります。

 

外注費は消費税の控除対象、給与は消費税の控除対象外

外注費として支払った場合は消費税を控除することが出来ますが、給与として支払った場合は控除することが出来ません。

例:売上:10,800円、給与又は外注費:5,400円、消費税8%

①給与として支払った場合(消費税控除対象外)

<消費税計算>
受け取った消費税        800円(売上10,800円に含まれる消費税800円)
支払った消費税              0円(給与5,400円には消費税が含まれていない)
納める消費税             800円(売上に関する消費税800円)

 

②外注費として支払った場合(消費税控除対象)

<消費税計算>
受け取った消費税       800円(売上10,800円に含まれる消費税800円)
支払った消費税          400円(外注費5,400円に含まれる消費税400円)
納める消費税             400円(800円-400円)

 

給与と外注費の区別の方法

給与と外注費は自由に決められるわけではありません。

以下の要件を総合的に勘案して決まります。
①他人の代替を受けることができるか。
→業務を依頼された側が自ら働かなければならない場合は給与。下請けや従業員等の第三者に依頼してもよい契約なら外注費

 

②報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
→作業時間を指定され報酬が時給で計算される場合は給与。

 

③ 作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然 に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
→完成品作成の詳細な作業の指示を受ける場合は給与。ある程度本人の裁量に委ねられる場合は外注費

 

④まだ引渡しを完了しない完成品が不可抗力(自然災害等)のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できる場合
→作業完了後に災害等により完成品が滅失しても報酬を請求できる場合は給与。作業完了後に災害等により完成品が滅失したら報酬を請求できない場合は外注費。

 

⑤材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されている場合
→材料を供与されている場合は給与。自身で用意する場合は外注費

 

まとめ

上記のように契約内容次第で給与か外注費かを決定します。

ここで注意するのはあくまで総合的に勘案して決定するので、例えば「上記の項目の内3項目が外注費に該当するから外注費」というように一律に判断することが出来ない点です。

個別事情を勘案して決定する必要があります。

なお給与の場合は「雇用契約書」を締結し、外注費の場合は「請負契約書」を締結することになります。
会社としては一般的に外注費が有利となります(消費税を控除できるため)。

報酬を受ける側は状況によって税額の有利不利が決まります(報酬金額と経費の計上金額次第)。

もちろん契約内容だけでなく実際にその内容に沿って業務が行われている必要があります。

給与と外注費は税務上区分が難しいところです。

どちらになるか迷うときは専門家にご相談下さい。

 

【参考条文等】
消費税法基本通達1-1-1

 

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