相続時精算課税制度をご存知でしょうか。

ここでは中小企業の株式を相続時精算課税制度を活用し、将来の相続税が節税できる方法をご紹介します。

暦年課税と相続時精算課税

個人から財産の贈与を受けた場合には贈与税の課税の対象となります。

その贈与税の税金の計算方法には暦年課税相続時精算課税があります。

贈与税の暦年課税

1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を控除した金額に税率を乗じて贈与税を計算します。

ケース:X1年中に合計300万円の財産の贈与を受けた場合

・贈与税の金額
(300万円-110万円)×10%=19万円

※相続開始前の3年以内に贈与が行われた場合、その贈与財産は相続時の財産に加えられます。

贈与税の相続税精算課税

贈与時に贈与財産に対する贈与税を納税し、その贈与者の相続が開始した時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納税した贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行うものです。

相続時精算課税制度を適用して贈与を行った場合の贈与税は、財産合計額から2,500万円を控除した残額に20%の税率を乗じて計算します。
※相続時精算課税制度を適用した場合、それ以後に相続時精算課税制度を適用した贈与者から贈与を受けた場合は暦年課税による贈与税の計算にはなりません。

ケース:X1年中に相続時精算課税制度を適用した贈与者Aから300万円の財産の贈与を受けた場合

・贈与税の金額
(300万円-2,500万円)×20%=0円

相続時精算課税を活用した場合、相続税の計算の際贈与した財産である300万円が加算されます。
その際の財産の評価額は贈与時の時価になります。

よって相続時精算課税制度を活用した場合、「贈与時の財産の時価」<「相続時の財産の時価」であれば相続時精算課税制度を活用した方が将来の相続税の節税となり、逆に「贈与時の財産の時価」>「相続時の財産の時価」であれば相続時精算課税制度を活用した贈与により将来の相続税が増加してしまいます。

 

相続時精算課税制度を活用した場合の相続税への影響

贈与時点の財産評価額 相続時点の財産評価額 相続税への影響 コメント
 300万円 300万円 なし なし
300万円 1,000万円 相続税負担減少 相続財産と合算される財産の時価は300万円
相続時精算課税制度を活用したため贈与時の時価が財産の評価額となる。
制度を活用しなければ相続時の時価である1,000万円で財産が評価されてしまう。
300万円 100万円 相続税負担増加 相続財産と合算される財産の時価は300万円
相続時精算課税制度を活用していなければ財産の評価額は100万円であった。
制度を活用したため相続税負担が増してしまう。

非上場株式の贈与に活用

上記のとおり、相続時精算課税制度の贈与を行う場合で、将来の相続税の節税になるケースは贈与時の時価より相続時の時価が高い場合です。

中小企業の株式は基本的に会社の業績と連動して評価額が変わります。
例えば将来の世代交代に備えて早めに株式を次の経営者に贈与しておきたいというケースで、現在は業績が落ち込んでいるけれど、将来的には回復する見込みであるという場合は相続時精算課税制度を活用して贈与を行うと将来の相続税の節税になります。

なぜなら相続税の計算の際に合算される株式の評価額は業績が落ち込んでいる時の低い評価額になるからです。

このように会社の業績が落ち込んでいるけれど今後回復する見込みがある場合は「贈与時の株式評価額」<「相続時の財産評価額」となるため、相続時精算課税制度を活用して生前贈与を行うと相続税の節税になります。

 

株式の贈与に相続時精算課税制度を活用するにあたって

現在の株式の評価を行ったり、将来の相続税の試算を行うのは専門知識が必要になります。

せっかく相続時精算課税制度を活用したのに、将来の相続税負担が増したのでは何のために生前贈与をしたのかわからなくなってしまいます。

よって必ず顧問税理士に相談の上で活用することをおすすめします。

 

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