法人税は、決算日の翌日から2カ月以内に、所轄の税務署に申告・納付することが定められています。しかし、さまざまな理由で期日までに申告できない場合のために、申告期限の延長制度が2種類用意されています。

それぞれ適用条件や申請手順が異なるので、違いを知っておきましょう。

2カ月以内に申告・納付が原則

「法人税」は、一事業年度に法人が獲得した所得に対してかかる税金です。会社は事業年度の期末決算を行った後、確定申告を済ませて法人税を申告・納税します。

 

税務署への税務申告書の提出、税金の納付には期限が定められており、法人税は決算日の翌日から2カ月以内に申告・納付しなければなりません。3月決算の会社なら、翌日の4月1日から2カ月以内なので、5月31日が期限となります。

 

申告・納付の期限を過ぎると、無申告加算税、延滞税などのペナルティが課されてしまうので、期限は厳守しなければなりません。

 

しかし、さまざまな事情で決算が確定しない、経理スタッフが急病になってしまった、台風で事務所が浸水して資料が消失してしまったといった場合は、どうすればいいのでしょうか。

 

緊急事態が発生する可能性はどの会社でもゼロとは言い切れません。そして、こうした場合でも何もせずに申請期限を過ぎると、ペナルティが発生します。

 

そこで覚えておきたいのが、法人税の「申告期限の延長の特例」と「申告期限の延長」と呼ばれる制度です。

 

申告期限を1カ月延長可能

法人税の「申告期限の延長の特例」は、その事業年度の終了日、つまり決算日までに所定の手続きを行えば、申告期限が1カ月延長可能になる制度です。決算日の翌日から2カ月以内と定められている法人税の申告期限が、3カ月以内に延長されます。

 

「申告期限の延長の特例」が適用されるのは、国税庁によると「会計監査人の監査を受けなければならない等の理由により決算が確定しない」場合などとされています。とはいえ、会計監査を受けていない会社でも申請は行えます。

 

申請が行えるかどうかを確かめるためには、会社の約款を確認してください。

 

約款に「定時株主総会は、毎事業年度の終了後3カ月以内に招集する」といった記述があれば、申告期限の延長申請が可能です。

 

というのも、株主総会は事業年度終了から3カ月以内に行うとされています。このため、「3カ月以内」に株主総会を行うと約款に定めている会社では、決算日の翌日から2カ月以内とされている申告・納付の期限までに、株主総会で承認を得て決算を確定することが、困難な可能性があるからです。

 

約款が「2カ月以内」となっている会社は、「3カ月以内」に変更することで、「申告期限の延長の特例」の申請が可能となります。

 

なお、「申告期限の延長の特例」は一度申請すると、翌年以降も適用されるようになります。

 

【申請方法】

法人税の「申告期限の延長の特例」を申請するためには、国税庁のホームページから「申告期限の延長の特例の申請書」をダウンロードします。

 

必要事項を記入して、所轄の税務署に郵送、または持参してください。延長の申請理由は「約款に則って、決算日から3カ月以内に株主総会を開催し、申告書の期限までに決算が確定しないため」などとすれば良いでしょう。

 

やむをえない場合は?

「申告期限の延長」は災害などの不可抗力によって、期日までに申告することが難しい場合に適用される制度です。

 

災害などがおさまった日から、2カ月以内に限り申告期限が延長されます。「申告期限の延長の特例」とよく似た名前なので、混同しないように注意してください。

 

災害などによる申告期限の延長には、「地域指定」による延長と「個別指定」による延長があります。

 

地域指定は、大規模な災害などにより被害が広い地域に及んだ場合に、国税庁が地域、期間を定めて実施するものです。基本的にその地域にあるすべての会社が対象となるため、税務署への申請は不要です。

 

個別指定は、税務署に申請することで申告期限が延長されます。地域指定以外の地域で災害が起こった場合や、指定された地域に事業所があるにも関わらず、本社が指定地域外にあるため期限延長が受けられない場合などに、所轄の税務署に申請を行います。

納付期限は延長不可

「申告期限の延長の特例」または「申告期限の延長」によって、申告期限が延長されても、税金の納付期限は延長できないので注意が必要です。申告期限の延長に伴って納税が送れると、延長した日数分の利子税がかかります。

 

利子を払うなら、延滞税を支払うのと変わらないと考える人もいるのではないでしょうか?

 

確かに、どちらの場合も支払いという負担が発生します。しかし、延滞税と利子税とでは、経理上の扱いが異なります。延滞税は損金扱いにはなりませんが、利子税は損金に算入できます。会社の収益から利子税分を損金として差し引くことで、会社の所得が少なくなり、法人税の減額につながるというわけです。

 

また、利子税の負担を避けるためには、概算額の税金をあらかじめ納税しておき、税務申告後に差額を精算する「見込納付(仮納付)」という方法をとることも可能です。

 

この方法なら、本来の納付期限までに税金を払っているので、利子税は発生しません。事前に納入した金額が、実際の税額より多かった場合は、税務署に対して「更正の請求」という手続きを行います。

 

申告期限の延長が可能な税金は、法人税のほか法人事業税、都道府県民税・市町村税(住民税)です。

 

法人事業税と都道府県民税は各都道府県税事務所、市町村税は各市町村役場に対して、それぞれ別の申請が必要になります。都道府県、市町村によって手続きが異なることもあるので、ホームページで確認するか役所に直接問い合わせてください。

 

なお、消費税については申告期限の延長はできません。本来の期限の決算日の翌日から2カ月以内に忘れずに納付しましょう。

 

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